
Laforet HARAJUKU
矢後のキャリアのスタート期の仕事の一つにLaforet HARAJUKUがあります。2015年から2018年の4年間、冬のグランバザールの広告コミュニケーションを担当しました。そこには瀧本幹也さん、坂田栄一郎さん、藤井保さん、伊藤幸子さんといった広告クリエイターの方々との協業がありました。ここでは、数々の名作広告を生み出してきたLaforet HARAJUKUの広告に矢後がどのような考えで、またどのような制作アプローチで挑んだか、矢後のインタビューからご紹介します。
LAFORET GRAND BAZAR 2015 WINTER
僕は、バザー自体のあり方を捉え直すことでバザーを消費行動から、価値転換を起こすという考え方でLAFORET GRAND BAZARの広告を制作しました。2015年の冬の広告では「欲望のボーダーラインを越える人」をコンセプトに、赤いバツマークを飛び越えるビジュアルを制作しました。このコンセプトは、僕自身の、バザーのような圧倒的な物量の場所に立たされると、消費欲が消失して、ただ周りを眺めてしまうという過去の体験から成り立っています。それでもせっかく来たのだし何かを買わなければいけないのかと、その場を徘徊して、なんでもいいからとにかく買い物かごにものを入れてみよう、違ったら後からまた戻せばいいや、という気持ちで何かを買い物カゴに入れ始めると、不思議と、欲しいものがちゃんと選べるようになる。そういう体験が、学習やキャリア形成のような、成長プロセスにどこか似ているように感じていました。



その時の僕は、このプロジェクトをもってアートディレクターとしてデビューしたと言っても過言ではないくらいのキャリアのスタート期で、自分のキャリアに関しても、なにか突破口が欲しいと思っていたことも、このコンセプトの確立を後押ししました。クリエイターというのは、その時代のその年齢でしか作れないものがあり、今の僕がどんなにこれに似たものを作ってもこれにはならない。似ていてもなにか持ってるムードが違うものになると思います。自分が技術的にうまくなってしまったこともあるし、時代とメッセージの掛け合わせも、今同じものを生み出せない理由になりますが、この時の僕と今の僕のいる環境が違いすぎて、同じものを作ったとしても、この時ほどこのテーマを強く信じてものづくりができないということが大きな理由になると思います。逆に今、子供がいて守るべきものがある僕が作るものを、この時の僕は作れないでしょう。このプロジェクトが今の僕にとって、再現不可能なその一つになっているとは間違いないと思います。


この仕事では、僕が手描きのイラストで世界観を提示し、それをフォトグラファーの瀧本幹也さん、コスチュームデザインの伊東佐智子さんといった各クリエイターが再解釈し写真の中に実現させていくというアプローチで進んでいきました。僕は色鉛筆でラフスケッチの細部に着彩しながら、「この服のマテリアルはこんなのが良さそう」とか「こういうライティングがよさそう」とか、企画書上で言語として共有されない部分にイメージを膨らませながら描き上げていきました。
クリエイターのみなさんはそれをじっくり観察することでラフスケッチからメッセージを受け取り、それぞれのなかで再解釈してクリエイションしてくださいます。そのためにまず、設計図として、鉛筆で描かれた「絵」としていいと思っていただけるようなラフが必要で、そのラフを超えるためにそれぞれのクリエイターがアイデアを出してくださいます。お互いにお互いのクリエイションを高め合う正のスパイラルを生むために最初のラフはあるのです。

飛び越える線のスタディ。どの形状の線が飛び越える時の緊張感、感情が一番伝わるかを絵にして検証します。

最終的なラフスケッチ。矢後が一度仮に写真を撮影し、そのポージングをもとに、デザインとして美しい形に変化させることで仕上げました。

LAFORET GRAND BAZAR 2017 WINTERのラフスケッチ。矢後が仮に衣装のデザインをスケッチし、コスチュームデザイナーの伊東佐智子さんに渡しました。



フォトグラファーの坂田栄一郎さんによる写真。雪の中の天文台で撮影が行われ、白銀の雪がレフ版のような役割を果たしました。ハッセルブラッドでポジフィルムで撮影し、そのフィルムをポスター原寸大のサイズでプロジェクターで照射し、制作メンバー全員でセレクトを決めるというプロセスで採用写真が決定しました。







LAFORET GRAND BAZAR 2016 WINTERのクリエイション。瀧本幹也さんの写真に矢後がコラージュを加えるというアプローチ。
LAFORET GRAND BAZAR 2018 WINTER
最終的にLAFORET GRAND BAZARの仕事を通じてつくりあげたコンセプトは「祭り」でした。獅子舞など、日本の祭りの多くは民間から生まれた背景を持ち、その年にとれた作物に感謝し、次の年の豊作を願います。バザーは日本では日本橋から始まり、今140年以上経ちます。それは、もう立派な伝統的なお祭りと言ってもいいのではないかというのがコンセプトで、文化のお祭りが、多様な文化の発祥地・原宿で起こるべきなのではないかと考えて、このビジュアルを制作しました。去年生まれたクリエイションに感謝し、今年生まれるであろう新たなクリエイションが、豊作であることを願うお祭りです。衣装は折り紙のように折でできていて、その衣装を着た人たちが獅子舞を舞う、異世界のお正月のようなビジュアルを2018年の1月に原宿に掲げることで、ファッションをはじめ、さまざまに原宿で生まれるクリエイションをセレブレイトしました。



