
Kid's Project
Pangraphicsでは、子どもたちのコラボレーションによるアートワーク制作やワークショップを行なっています。これらは矢後の立ち上げた「Imitative Behaviour」というコンセプトをもとにプロジェクト化され、子どもたちの持つプリミティブなクリエイションを社会の中で機能させるための実験の場としています。以下矢後の過去のインタビューから再編集されたテキストとなります。
Imitative Behaviour : In the Footsteps of My Daughter
「Imitative Behaviour」はもともと、長女のましろと僕のコラボレーションアートワークシリーズとして始まりました。僕たちは特にコロナ禍を、一緒に過ごす時間の中で、たくさんの絵を描いてたくさんの時間を共有した気がします。時にはましろが僕の絵を真似し、時には僕がましろの絵を真似することで、お互いがたどり着けないクリエイションができてるのかなと思うことがあります。
ましろの線はとても魅力的で、ましろが絵を描いている最中、私はその線をよく観察していました。そこには、コントロールされた線、コントロールされていない線、強い線、弱い線など、さまざまな表情がありました。 ずっとそれを見ていたら、なんだかましろのその絵になにかしらデザインを施したくなりました。デザインされたものは、無駄な部分や弱すぎる部分がなくなってしまい、記号的、または抽象的になりすぎるので、どうしたらましろの絵のこの良さを、物理的なマテリアルの伴わない世界で表現できるだろうと、デザイナーとしての欲を掻き立てられたのかもしれません。
制作の流れはシンプルで、僕がましろの描いたたくさんのドローイングの中からグラフィックデザイン的にポテンシャルのあるものを選び、それらをスキャンし、その線をPC上で点としてトレースします。そこで彼女の線をドットを使ってトレースし、弱いストロークには少ない点を、強いストロークには多い点を用いて表現しました。この時に、普通は無くしてしまう、一見大きな絵の構成に関係のない線や汚れをちゃんと表現してあげることを重視しました。そうすることで、ましろの絵の良さがデザイン化された世界の中でも輝くのではないかと。これは、のちに子どもたちのクリエイションを社会の中で機能させたいという自分の思いに繋がる最初のきっかけだと思っています。










矢後がグラフィックワーク化した後に、長女のましろと対話を行い、グラフィックワーク内にレイアウトした。



矢後と長女のましろの香港での展示。PMQという香港のデザイン施設が行う「detour」というイベントのオープンコールに参加。キュレーターへの数回のプレゼンテーションを経て展示が実現した。





NTT都市開発が展開する「原宿クエスト」、フラワーアーティストの篠崎恵美さんの主催するクリエイティブスタジオ「eden works」、クリエイティブエージェンシー「SIX」とPangraphicsのコラボレーションで、2026年3月13日と14日に、こどもと花のイベントを開催。原宿クエストのある原宿駅周辺で、eden worksの花を1万本配布し、矢後の長女ましろの絵をアクリルのオブジェに転換したインスタレーションやサインシステムが登場し、街を賑わせた。
子どもたちから大人が学べること
こうしてできたのが僕らのコラボレーションとしてのアートワークで、僕はこれを、大人が子供の持ってるクリエイティビティを模倣して学ぶ行動だと思っています。「Imitative Behavior」というのは教育の場面では通常、子どもの成長過程において、親を真似してなにか新しいことを得ることを指すそうなのですが、このプロジェクトでは、逆の意味を持ちます。
僕たちは通常、歴史や有名な美術運動や作家たちなど、過去からインスピレーションを得ます。僕自身も、そうしてきました。しかしこのプロジェクトでは、子供のクリエイティビティという「未来」からインスピレーションを受けているような感覚があります。
数年前に観たゾンビ映画の中で、こんな台詞がありました。「もし大人と子どものどちらか一方しか助けられないとしたらどうする? 大人を選ぶことは“知恵”を選ぶこと。子どもを選ぶことは“希望”を選ぶことだ。」ぼくだったら子供を選んでしまうなと思い、2022年に台湾での展覧会で「HOPE」というテーマの初めてのましろとのコラボレーションの作品を発表しました。
グラフィックデザインに感じていた課題
それより前、僕はPCで作るデザインに課題感を持ってました。PC上でつくる基本的な幾何形態や線は、どうしても誰でも作れるような凡庸な仕上がりにしかならない。文字や写真のレイアウトなどの構成と編集においてはPC作業は効率がすごく上がるためにたくさんの検証ができてクオリティアップにつながるのですが、造形においてはどうしても数学的な計算によって導き出される線が、自分のクリエイションにおいては造形的な探求を妨害してるように感じていました。そんな中でこのプロジェクトは自分のデザインにとって大きな突破口になったなと感じています。
基本的に、グラフィックデザインは表現を単純化することが求められます。だけどそれが時にそのデザインのアイデンティティすら削ってしまうのではないかと思うことがあります。グラフィックデザイン業界では、シンプルなデザインプロセスをつくるために「削ぎ落とす」という言葉がよく使われます。しかし、僕がここでやったことは「圧縮する」に近いのではないかと思っています。削ぎ落とされた彫刻は、削ぎ落とされた部分がどんなものだったのか想像することは難しいけど、圧縮された、画像は圧縮されて見にくくなったディティールがどんなものだったのか想像することができます。





竹尾青山見本帖店で行われた紙のアクセサリーの展覧会。長女のましろと次女のねいろが紙のアクセサリーを作ってそれを身にまとって出かけていたことから、大人が使用できる紙のアクセサリーを開発。そのデザインから、真鍮のデザインを、コンテンポラリージュエリーアーティストのSO/OBJECTSが真鍮のアクセサリーを制作して販売した。




Pangraphicsで開催した子どもたちによるオーナメントデザインワークショップ。金属のテクスチャーを模した竹尾の「スタードリーム」という紙を使用し、子どもたちが自由にオーナメントを制作(左)。そのデザインから、真鍮のオーナメントをSO/OBJECTSが制作した(右)。ワークショップには1歳から12歳の子どもたちが参加した。


生きたもみの木のクリスマスツリーブランド「casa tree」と目黒のカフェ&レストラン「wellk」とのコラボレーションとして、食べられるキャンディーオーナメントのアイデアをPangraphicsが開発し、wellkがレシピを開発。casa treeのオンラインストアと、松陰神社にあるセレクトショップ「This___」で販売。また石原さんの主催する「Cake study」で子どもたちが食べられるオーナメントを制作するワークショップも行った。